ヤマウチマテックスHD株式会社 (Vol.2)
取締役 山内 一慶 様
福井県福井市 | 製造業 | 100名~
チタンなど非鉄鋼金・貴金属の丸線・ 異種線の製造販売、眼鏡用金属材料の加工販売
2026年5月20日
「みんな優しい」だけで終わらせない――外国人エンジニア定着のための受入体制づくり
ヤマウチマテックス株式会社は、地域の製造現場で眼鏡や医療機器などの材料加工・製造などを担うものづくり企業です。
今回は、入社3ヶ月目を迎えた外国人エンジニア・ヘンリーさんの受入れについて、山内一慶取締役を中心に、現場の上長の方やエンジニア本人にもお話を伺いました。
この記事のポイント
- 入社3ヶ月で作業習得には手応えが出ている
- 傷の判断や会議理解には、日本語と経験の両面で支援が必要
- 現場の優しさに加え、日本語教育と成長設計が定着を支える
外国人エンジニアを採用したい。しかし、現場で指示が通るのか。受入れ担当者の負担が増えすぎないか。採用後、きちんと定着してくれるのか。
製造業や建設業の現場では、外国人材への期待が高まる一方で、受入れには不安もあります。特に、日本語での細かな確認、品質に関わる判断、入社後のフォロー体制は、多くの企業が悩むポイントです。
ヤマウチマテックス株式会社では、外国人エンジニアのヘンリーさんが入社して3ヶ月目を迎えました。山内一慶取締役と上長の方に、ヘンリーさんの現在の様子と、受入れの中で見えてきた手応え・課題について伺いました。
入社3ヶ月目。作業の覚えには手応えがある
ヘンリーさんが現在関わっているのは、金型の保全や、製品表面の傷の確認などの作業です。
入社当初は、1日2個程度だった作業が、現在は1日4個程度まで進められるようになりました。熟練者は1日8個程度を対応するため、まだ成長途中ではあります。それでも、入社3ヶ月目という段階では、着実にできることが増えています。
現場では、ヘンリーさんについて「作業自体は問題なく、覚えも早い」という受け止めがあります。日本で通常採用する場合と比べても、作業の覚えの早さには手応えがあるといいます。
ただし、作業を覚えることと、現場で細かな判断ができるようになることは別です。入社3ヶ月目の今は、最初の作業には慣れてきた一方で、次の課題も見えてきた時期でした。
難しいのは、作業そのものより「傷の判断」
現場で特に難しさが出やすいのが、傷の確認です。
寸法であれば、数値で確認できます。基準に対して合っているか、外れているかが比較的わかりやすい。一方で、傷の判断は、種類や状態によって変わります。
取材の中でも、「寸法には正解があるが、傷はいろいろなパターンがある」「経験が必要になる」という話がありました。これは外国人だから難しいというだけではなく、日本で採用した人でも時間をかけて覚えていく領域です。
ヘンリーさんも、寸法のように答えが明確なものについては確認しやすい一方で、傷のように経験が必要な判断では、まだ日本語で細かく確認する難しさがあります。新しい素材や技術的な内容について、「何を見ればよいのか」「どこを確認すればよいのか」を聞く場面では、日本語の壁も出てきます。
そのため、現場では一度説明して終わりではなく、実物を見ながら確認し、必要に応じて翻訳アプリや簡単な英語、簡単な日本語を組み合わせています。
チームミーティングは難しい。だから1対1で補う
日本語の課題は、作業中だけではありません。
ヘンリーさんは、チームミーティングのように日本人同士が話す場面では、内容を理解しきれないことがあると話していました。特に、複数人が速いスピードで話す場面では、難しさを感じやすいようです。
ただし、その後に1対1で説明してもらえることについては、ありがたいと感じています。
すべての会議をその場で完璧に理解してもらうことは、入社初期には簡単ではありません。大切なのは、本人の仕事に必要な内容が、最終的に伝わっているかどうかです。
現場の上長や先輩社員が辛抱強く聞く。必要に応じて簡単な英語を使う。ヘンリーさんも、簡単な日本語で返す。そうしたやりとりを重ねながら、少しずつ現場でのコミュニケーションを増やしています。
「みんな優しい」と感じられること
取材の中で、ヘンリーさんは何度も「みんな優しい」と話していました。
わからないことを聞いてくれる。簡単な英語も使ってくれる。昼食の注文を覚えてくれている。そうした小さなことが、本人にはしっかり伝わっています。
ヤマウチマテックス株式会社では、月1回の昼食会もあります。仕事中だけでは話しきれないことを話したり、少しずつ関係をつくったりする機会にもなっています。
外国人エンジニアにとって、日本で働くことは、仕事だけでなく生活環境も大きく変わる挑戦です。職場で安心して話せる人がいること、自分が受け入れられていると感じられることは、定着の土台になります。
ただし、「みんな優しい」だけで定着が決まるわけではありません。
優しさは、あくまで土台です。その上に、日本語教育、業務上のフォロー、成長の見通しを重ねていく必要があります。
日本語教育は、現場任せにしないための仕組み
ヘンリーさんは、仕事と並行して日本語教育にも取り組んでいます。
週2回・各2時間のオンライン授業を基本に、約1年半の継続学習を想定しています。内容は、文法や語彙だけではなく、仕事で使う確認、報告・連絡・相談、チームミーティング後の質問の仕方なども含みます。
日本語教育は、本人の努力だけに任せるものではありません。現場の負担を減らすための仕組みでもあります。
たとえば、傷の確認で「これは大丈夫ですか」と聞けること。ミーティング後に「今日やることはこれで合っていますか」と確認できること。わからない時に、そのままにせず相談できること。
こうしたやりとりが少しずつ増えれば、現場の上長や先輩社員も教えやすくなります。
外国人エンジニアの受入れでは、現場の善意だけに頼りすぎないことが重要です。日本語教育と現場フォローを分けて考えるのではなく、セットで進めていくことが必要になります。
成長実感をどうつくるか
入社直後は、新しいことが多く、成長を感じやすい時期です。しかし、基本的な作業を覚えた後は、毎日同じ作業をしているように感じることもあります。
ヘンリーさんも、入社当初は1日2個程度だった作業が、現在は4個程度までできるようになりました。一方で、熟練者は1日8個程度を対応します。本人にとっては、できるようになった実感と、まだ差があるという実感の両方がある段階です。
ここで大切なのは、今の作業が何につながっているのかを伝えることです。
現在の金型の保全や傷の確認は、将来的に金型の設計や、工程全体の理解にもつながっていきます。単に同じ作業を続けているのではなく、次の仕事に進むための土台をつくっている。本人がそう理解できれば、日々の作業の受け止め方も変わります。
先の見えないOJTにしないこと。今やっている仕事の意味と、次に目指す姿を伝えること。これは、外国人エンジニアに限らず、新人育成全体に通じるポイントです。
最初の1人の経験を、次の受入れに活かす
今後のポイントは、ヘンリーさんの経験を、次に入社する外国人エンジニアの受入れにも活かしていくことです。
ヘンリーさんは、次に来る外国人エンジニアに対して、すでに準備すべきことを共有しています。仕事で必要になりそうな基礎知識や、持ってくるもの、持ってこなくてもよいものなど、自分の経験をもとに伝えています。
これは、単なる親切ではありません。最初の1人が学んだことを、次の1人に渡していく流れができれば、会社としての受入れノウハウになります。
今後は、ヘンリーさんが学んだ作業や判断のポイントを、少しずつマニュアル化していくことも考えられます。マニュアル化は、後輩のためだけではありません。本人が自分の理解を整理する機会にもなります。
ただし、真面目な人ほど抱え込みすぎる可能性もあります。そのため、業務時間外に任せきりにするのではなく、1日30分〜1時間程度、業務時間内で取り組むなど、負担を管理する設計が必要です。
受入れ後の設計が、定着につながる
ヘンリーさんの入社3ヶ月目は、手応えと課題の両方が見えてきた時期でした。
作業の覚えは早い。入社当初よりできることも増えている。一方で、傷の判断やチームミーティングなど、日本語と経験が絡む場面には、まだ課題があります。
それでも、ヘンリーさんの「みんな優しい」という言葉からは、周囲の受入れ姿勢が本人に伝わっていることがわかります。1対1での確認、簡単な英語や日本語の併用、月1回の昼食会、日本語教育、そして次の成長ステップの共有。そうした一つひとつが、定着の土台になります。
外国人エンジニア採用は、採用した時点で終わりではありません。入社後の早い段階で、作業習得、日本語、判断業務、生活面の不安を見えるようにし、現場フォローと日本語教育をセットで進めていくことが大切です。
「みんな優しい」という安心感を、仕事の成長につなげる。最初の1人の経験を、次の受入れにも活かしていく。
その積み重ねが、外国人エンジニアの定着に近づく一歩になります。
外国人エンジニアの採用や受入れ体制づくりに不安がある方は、自社の現場に合わせた進め方について、まずはお気軽にご相談ください。